【教員エッセイ】衛星放送からDAZNへ──進化し,混在するメディアのなかで/茂登山清文


「ダ・ゾーン」って読みます。今季から,Jリーグは,テレビじゃなくてネットワークを通した動画配信になるんですね。長い間,家庭の(だけじゃないけれど)娯楽の中心だったテレビから,いよいよ電子ネットワークへと,大きく舵が切られました。試合を観ようとするなら,スマホでもいいけれど,小さなスティックをテレビにさせば大きな画面で楽しめます。2000年ごろから放送と通信が融合する次世代の花形として,脚光をあびた衛星放送から,また新しいメディアへと進化しているのです。

 

LINE や,Twitter,それに Instagram。私たちは,SNS(ソーシャル・ネットワーキングサービス)の手軽さと便利さの恩恵にあずかっていて,それらなしの生活を想像することはできなくなりました。GoogleFacebookは,ひょっとすると若者には,旧い,とは言わなくとも,少しばかりめんどぃものになりつつあるかもしれません。

 

こんなことを,Apple コンピュータの創業者で,iPhoneiPadを世に送り込んだスティーヴ・ジョブズが言っています。自分が若い時,『全地球カタログ』という,自分たちの世代にはバイブルのようなすごい本があって,それは35年前の紙版のGoogleだったんだ,と。そこに掲載された情報量は,今にしてみればわずかなものですが,当時は刺激的で豊かなものと映ったはずです。

 

情報を私たちに届けてくれる形,メディアは,日々変わってゆきます。画像がインターネットブラウザで見られるようになってから,まだ四半世紀も経っていません。みなさんの家には,それより古いものが数えきれないほどあるはずです。本やCD,柱時計に電気製品,物持ちの良い人なら服だってたくさんあるかもしれません。それらは思い出の品となっている場合もあるけれど,電子ブックやスマートウォッチとは違う経路で,異なった体験へと誘ってくれます。

 

あらたなメディアが次々に登場し,新旧のメディアが混在するという環境に私たちは生きています。それは,メッセージとメディアが,目的と手段が一対一で対応することのない,複雑な事態でしょう。そんななかで,試す価値のあるひとつの方法があります。それは,メディアから時折り距離をとってみる,ということです。